高血圧について
高血圧をお持ちの方は、国内に約4300万人と推定されています。2010年の国民健康・栄養調査では、30歳以上の日本人男性の60%、女性の45%が高血圧と判定されており、人口の高齢化に伴いさらに増加することが予想されます。至適血圧である120/80mmHgを超えると、心臓や脳、腎臓病などにかかってしまう可能性や、それに伴う死亡リスクが上がるというデータがあり、適切な対応が必要です。
では、どのような方が「高血圧」に当てはまるのでしょうか。
高血圧の診断は、血圧をどこで測定したのかによって少し異なります。自宅で落ち着いて血圧を測ったときに、135/85mmHgを超えると、高血圧として対処する必要があります。ただし、病院やクリニックなどの診察室で測ると血圧は高く出やすいため(白衣高血圧と呼びます)、その場合は少し基準が和らぎ、140/90mmHgが目安とされています。血圧は上腕(二の腕)で計ることが推奨されておりますが、計る度に多少の変動があるため、2回計った平均をそのときの血圧として判断します。
血圧を測定し高血圧である場合に、中止しなければならないことは、「その高血圧に何か原因があるか」という事です。
高血圧患者さんのうち、9割の方は原因を特定できない「本態性高血圧」と呼ばれますが、残りの1割の方は、「二次性高血圧」といって明らかな原因を特定できるとされています。後述します、「二次性高血圧」を適切に発見することが重要です。
治療は、まずは生活習慣の是正が必須です。減塩食・食事内容の再考・減量・運動・節酒・禁煙・有酸素運動などが挙げられます。
一口に減塩食や食事内容の再考といっても、実際にはなかなか難しいものがあります。日本における加工食品の栄養成分表示には「Na(ナトリウム)表示」が決められており、食事の際に参考になるのですが、注意するべき事柄として、Na1gは塩分2.54gに相当するという点が重要です。現在日本人の平均塩分摂取量は10gを超えていますが、目標は1日6gと言われており、その差は大きいです。多くの方は塩分に気をつけようと思っていても、実際には目標よりも多く摂ってしまっているという実態があるのですが、食事療法における最大の問題点は、「自分が塩分を何g摂っているか分からない」という点です。この点をはっきりさせる検査として「24時間蓄尿検査」という検査があります。これは、1日の尿をためて頂き調べることで、1日に摂取している塩分量をg単位で算出することが出来るという検査です。
生活習慣を是正しても血圧が安定しない場合には、血圧を低下させるお薬である「降圧薬」を始めていきます。現在日本には7種類の降圧薬(カルシウム拮抗薬・アンジオテンシン変換酵素阻害薬・アンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬・利尿剤・ベータ遮断薬・アルファ遮断薬・レニン阻害剤)がありますが、心臓・腎臓・脳・糖尿病の有無などを考慮し、患者さんにあったお薬の組み合わせで治療を始めて行くことになります。
血圧の薬は、長期間のお付き合いになることが多い薬ですが、経過次第では減量したり中止したりも可能になります。ご自身の判断でやめたりはせず、医師と相談の上調整されることをお勧め致します。