脂質異常症について
脂質異常症とは、端的に言えば「コレステロールの異常」を意味する病気です。
コレステロールは、LDLコレステロール(通称:悪玉コレステロール)、HDLコレステロール(通称:善玉コレステロール)、中性脂肪の3つから構成されます。
以前はコレステロールの異常は「高コレステロール血症」「高脂血症」と呼んでいたのですが、最近になりHDLコレステロール(善玉)が低いことも重要なサインの一つであると分かってきたため、高い低いに関わらず「脂質異常症」という病名に変わってきています。
平成24年の日本人の主な死因別死亡数では、悪性腫瘍が28.7%と最多ですが、心疾患15.8%、脳血管疾患9.7%と動脈硬化によって引き起こされる病気が1/4を占めています。
動脈硬化の大切な要素の一つが脂質異常症で、悪玉コレステロールが高いほど、善玉コレステロールが低いほど、病気のリスクは上がります。
ただし、この病気は高血圧などと同様に全く自覚症状がありません。治療したからといって体がすっきりしたり、軽くなったりということは無いのですが、だからこそ未来の自分に対して病気の可能性を下げていく、とても大切なサインなのです。
もし健診などでコレステロールの異常を指摘されたなら、まずは明らかな原因が無いかを調べることが重要です。
LDL-コレステロールが高いときには、甲状腺機能低下症やネフローゼ症候群、糖尿病やクッシング症候群などが併存していないかの確認を行い、中性脂肪が高いときには、飲酒や肥満、糖尿病などが無いかも確認が必要です。
もし明らかな原因が分かれば、そちらへの対応も必要になってきますが、いずれにせよコレステロールは下げていく必要があります。しかし、コレステロールの値をいくつまで下げるかに関しては個人によって異なります。
例えばLDLコレステロールに関しては、既に一度心臓の病気をされているかたは100mg/dlという厳しい目標値になりますし、糖尿病や腎臓病などをお持ちの方は120mg/dl、40歳代と比較的若い方で何も持病が無ければ160mg/dlまで許容されるケースもあります。健診ではコレステロールの基準値は厳しめに設定されていることも多いため、引っかかってしまった方は、ご自身の目標値に関して一度医師と相談されることをお勧めします。
治療は、生活習慣・食事・運動の三本柱になっており、それでも低下しないようならお薬が必要になります。具体的には、標準体重の維持・禁煙・アルコール過剰摂取を控えるなどで、食事内容としては肉や乳製品・卵巣の摂取を控え、魚や豆類・野菜の摂取を増やすことが大切です。30分以上の有酸素運動も重要です。
お薬に関しては、大きく分けるとLDLコレステロールを低下させるものと中性脂肪を低下させるものの2つがあります。他の飲み薬との飲み合わせなどもありますので、お一人お一人に併せてご相談させて頂きます。
高血圧同様、長いお付き合いになるお薬ではありますが、生活習慣を改める事で減らしたり中止することも可能ですので、薬に頼りすぎずに過ごすことが大切です。