慢性腎臓病について

腎臓が悪いというと、どの様なイメージをお持ちでしょうか。
おしっこが出なくなる?足がぱんぱんにむくむ?人工透析を始めると一生やめられない?
これらのイメージは、いわゆる「末期腎不全」といって、ご自身の腎臓では体の中にたまっていく老廃物を処理仕切れなくなり、代わりの方法を余儀なくされる病気から来ます。
慢性腎臓病とは、このような「末期腎不全」への扉であり、また心臓や脳卒中を起こしやすくなる要素の一つでもあるのです。ひとたび腎不全となれば元通りの状態に回復することは希と言わざるを得ません。ただ、腎不全へまだ移行していない慢性腎臓病の間にしっかりとした対策や治療を行えば進行を止める事も十分可能です。
ではどのような状態を慢性腎臓病と呼ぶかというと、尿検査をするといつも蛋白がおりる場合や、血液検査で腎臓の働きが60%を切っている場合です(これは60歳男性だとクレアチニン1mg/dlに当てはまり、60歳の女性だとクレアチニン0.8mg/dlに該当します)。
腎臓は血管の塊ですので、加齢とともに血管年齢が上がれば、自然と腎臓の働きも弱っていきます。早め早めの対策が、平均寿命が伸びている日本においては重要なのです。
食事療法やお薬での治療が中心になりますが、食事療法に関しては、塩分は控えなければなりませんが、タンパク質やカリウムという成分も人によっては控えなければなりません。またお薬は、血圧はもとより血糖値、コレステロール、尿酸、貧血、ホルモンバランスなど、様々な要素を考えお体にあるものを選んでいく必要があります。
慢性腎臓病は、ひとたび腎不全へと移行してしまうと、なかなか元通りという訳にはいきません。最終的には人工透析を含めた治療が必要となるケースも少なからずあります。
当院では、腎不全が進行し末期腎不全となった方に人工透析を提供できる施設はありません。しかし、だからこそ少しでも腎臓の悪化を防ぐ、そんな治療のお手伝いができればと考えています。
クレアチニンとは
慢性腎臓病や慢性腎不全の程度を評価するには、色々な方法があります。それぞれ長所短所がありますが、血液検査で分かる「クレアチニン」は、よく利用されるものになります。
そもそもクレアチニンとは、筋肉へのエネルギー供給源である物質が代謝されてできるもので、いわゆる「老廃物」です。老廃物であるクレアチニンは、通常であれば腎臓から体の外へ排泄されます。しかし腎臓の働きが弱っていると、老廃物を十分排泄できなくなるため、血中のクレアチニンが基準値よりも高くなってしまうのです。基準値はまちまちですが、概ね1mg/dlを超えると「クレアチニンが高い」という状態になります。
クレアチニンを調べるときに注意しなければならないことが2点有ります。1点目は、この数値は体の筋肉量に比例して大きくなるという点です。体格の大きい人のクレアチニン1.5mg/dlと、高齢で小柄な人のクレアチニン1.5mg/dlでは全く意味が異なり、本来排泄されるクレアチニンが少ないはずの高齢で小柄な型におけるクレアチニン1.5mg/dlの方が、腎臓の働きはより弱っていると捉える必要があります。2点目は、クレアチニンは腎臓の働きに低下があっても、僅かな変化しか示さないという点です。例えば、ある血液検査にて60歳の女性がクレアチニン1.0mg/dlであったとしましょう。1ヶ月後に検査するとクレアチニンが1.2mg/dlに上がっていた場合、僅か0.2mg/dlの悪化でしかありませんが、腎臓の働きは10%前後落ちている事になるのです。この状況は1ヶ月の間に腎臓が悪くなる原因が何か無かったか調べていく必要があり、少しの変化も見逃さないことが重要です。
以上の点に注意は必要ですが、クレアチニンは腎臓の働きを知る上でとても大切な血液検査の指標です。ご自身の血液検査をお持ちの方は、是非一度クレアチニンの数字をご覧頂き、僅かであっても正常範囲内を外れていないかご確認下さい。