糖尿病について
糖尿病とは、糖分を体内に取り込み血糖値を低下させるインスリンというホルモンが、分泌不足を起こしているか、もしくは作用が低下していて血糖値の高い状態を指します。糖尿病の診断は、血糖値に加えて直近の1~2ヶ月間における血糖の状態を表すHbA1c(ヘモグロビン・エー・ワン・シー)を用いて行います。1~2ヶ月間における血糖の状態を表すため、検査直前の食事には影響を受けません。具体的に糖尿病とは、空腹時の採血で血糖値が126mg/dl以上、HbA1c6.5%以上の場合を指します。つまり、「糖尿病」という病名ではありますが、尿の中に糖が降りていなくても診断に至る事があるのです(詳しくは、「尿の異常」をご覧下さい)。
糖尿病の何が悪いかというと、血糖値が不自然に高い状態が続くと体内の血管を傷つけ、長い時間をかけて心臓含めた血管の病気や神経、眼、腎臓などにダメージを与えるという点です。神経に影響が出れば「糖尿病神経障害」、眼に影響が出れば「糖尿病網膜症」、腎臓に影響が出れば「糖尿病腎症」を生じ、一般的に糖尿病による影響はこの順番で出てくることが多いとされています。例えば「糖尿病腎症」を認め、尿蛋白が出ている状態や腎臓の数値であるクレアチニンが上がっている状態では、眼や神経にも病気が出ている可能性が高いという判断をします。その他、大きな血管にダメージが出ると、心筋梗塞や脳梗塞など死に直結しうる病気を起こすこともあり、健康な人と同様の健康寿命を達成するために早期診断と治療開始が必要です。さらに、最近では糖尿病がある方は骨粗鬆症や認知症、悪性腫瘍のリスクが上がると言われており、血糖値に限らず多くの面での適切な対応が不可欠です。
糖尿病には大きく分けて4つタイプがあります。インスリンを分泌する膵臓のベータ細胞が破壊される1型糖尿病、インスリンの分泌量が低下もしくは作用が低下する2型糖尿病、その他の機序によるもの、妊娠糖尿病の4つになります。このうち、生活習慣と大きく関わってくるのは2型糖尿病になりますが、2型糖尿病の中でもインスリンが分泌低下するタイプと作用が低下するタイプに分かれます。いずれのタイプかは血液検査で判断が可能であり、この区別がお薬での治療を開始するときに重要な情報になります。
1型糖尿病はインスリンの注射が必須になりますが、2型糖尿病は食事療法・運動療法・薬物療法をバランス良く行っていく必要があります。患者さんそれぞれにあった治療が必要ですので、二人三脚の姿勢がとても重要です。
糖尿病の飲み薬は、現在7種類あり(スルホニル尿素薬・速効型インスリン分泌促進薬・アルファグルコシダーゼ阻害剤・ビグアナイド薬・チアゾリジン薬・DPP-4阻害薬・SGLT2阻害薬)、糖尿病のタイプや生活スタイルによって飲み合わせを考えていきます。
糖尿病は、進行すれば喉の渇きや多飲多尿、体重減少などが出ることもありますが、基本的には無症状です。健診や尿検査などで指摘された際には、とにかく早め早めの対応が望ましいですので、お気軽にご相談下さい。